「炭水化物(糖質)を摂るとがんのエサになる」と主張する人はたくさんいます。本を書いている人もいますね。
最近では断糖食という、糖質を完全に避けるような食事法を提唱している人もいます。
糖質を避ける=ケトン食の類になります。
「がん細胞が糖質をエネルギーにするから」というのが大きな理由ですが、正常細胞も糖質のエネルギーは重要です。
がん細胞への供給を断つためには、ほぼ糖質をゼロにしなければなりませんが、それでは人体を健康に保つことはできません。
がんと闘うには体力が必要ですし、糖質を極端に制限してしまうと著しく体力が低下して体調が悪化します。
極端な糖質制限はとても厳しいですし、有効だとはいえません。
実際に糖質制限に取り組んだ人はたくさん知っていますが、がんを撃退できた、などのケースは皆無ですし、そもそも糖質制限を続けられる人は非常に少ないです。
考えてもみてください。
米、そば、うどん、パスタなどの小麦類、パン、果物類はダメ。
じゃがいも、人参、などの根菜類を一切食べてはいけない、となれば途方にくれます。スーパーの食品コーナーに行ってみると買えるものがほとんどない、という状況です。
理論として「がんの養分になるブドウ糖を断つ」という理屈は理解できますが、実践はかなり難しいです。さらには体調悪化の危険もあります。
ですので、私は「糖質を摂りすぎない」ことには賛成ですが、「糖質と摂らない」という極端な糖質制限には反対です。
では、詳しく説明しますね。
まず、炭水化物と糖質は同じ栄養素を指します。炭水化物&糖質は=ブドウ糖の事で、別名がグルコースです。
オレンジ、キウイ、りんごなどの甘いフルーツ類も、玄米やそばと栄養素的には同じ「炭水化物・糖質」です。
炭水化物・糖質=ブドウ糖は体にとってはもっとも効率のよいエネルギー源なので、ブドウ糖が体内に取り込まれているうちは、体の細胞はブドウ糖を主なエネルギー源として使います。
ブドウ糖を主なエネルギー源としているとき、クリーンにエネルギーは燃焼され、燃えカスのような副産物は出ません。
しかし、絶食や糖質をゼロにするなどの食事制限を行い、ブドウ糖が枯渇すると、人間はエネルギー源としてたんぱく質や脂肪を使います。
たんぱく質をエネルギー源にしたときは、燃えカスとしてアンモニアが産出されます。アンモニアは毒性が強い物質ですが、肝臓で尿素に変換されてほぼ無害な状態になります。
いっぽう、脂肪をエネルギー源にしたときは、燃えカスとしてケトン体が産出されます。体はとても賢く、このケトン体さえも他のエネルギー源が枯渇しているときに活用する仕組みがあるのです。
しかし、ブドウ糖が枯渇した状態が続くと、ケトン体が過剰に産出され、「ケトアシドーシス」という状況に陥ります。
ケトアシドーシスになると腹痛や意識が遠くなる、嘔吐、動悸、手足のけいれんなどが起きてしまいます。
「糖質を断つ食事療法」の理論は、ブドウ糖を断てばがん細胞は増えることはできず、正常細胞はケトン体を使って健康を保てる、ということです。
がん細胞のほうが増殖能力が強いので、ブドウ糖を拾ってこようとする力も強いのは事実です。
であれば、体内のブドウ糖をほとんど枯渇させるレベルにしないと兵糧攻めのレベルには到達しません。
断糖質の理論を実践するには、「糖質ほぼゼロ」を実現しなければならず、ほぼケトアシドーシスに近い状態を実現するということなのです。
そこまでやれば兵糧攻めといえるでしょうが、ケトン体を使うのはあくまで緊急的な措置です。
恒常的に使えるのなら、人間は脂肪だけで生きていけることになりますが、そんなことはありえません。あらゆる疾患を引き起こしますし健康体ではいられません。
がん細胞がブドウ糖を活用する、というのは、ごく基礎の情報であり、人間の細胞すべてがブトウ糖を利用することを考えれば議論の必要がないほど当たり前のことです。
「じゃあ、ブドウ糖を断てばいい」この考えは、誰もが考え付くことです。
考えが正しいとしても、人体の仕組みを考えると実践が非常に困難な机上の空論なのです。
「ブドウ糖が多い食生活を続けたらがんが大きくなる」
これが事実なら、現代人は30歳代で全員死んでいるでしょう。
私の考えは「がんに勝てる絶対的な方法がない以上、人間の恒常性維持力や自然治癒力=本来あるべき姿を徹底的に高めていくしかない」ということです。
重視すべきなのは、人として「何がベストの栄養バランスか」ということです。
炭水化物・糖質は重要な栄養素です。
摂り過ぎはもちろんダメですが、摂取しなければなりません。であれば何から摂るか。どのくらい摂るかということが重要です。
”これががんに効く””あれはがんに悪い”といって、特定の食材を食べたり極端な制限をすること自体が根本的にズレているのです。
そういうことも踏まえて「がんを治す生き方」を伝えています。
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明日の【がん克服への道】はメンタルに関するお話です。
がんと告知された日から、見える景色は大きく変わります。
家族にとってもそれは同じです。
命を左右する病気に直面したとき、どんな人でもメンタルは乱れます。しかし、不安や恐怖に押しつぶされてしまうと、そこで終わってしまいます。
どうやってメンタルをコントロールするのか、は重要なテーマです。