引き続き食事療法がテーマです。
今日は、従来のがん食事療法である「玄米菜食」についてお話したいと思います。
「がんの食事療法」は、歴史が長く様々な方法論が提唱されています。
古いものとしては、「粉ミルク療法」や、「飲尿療法」などもあり、一時はかなり流行しました。
「粉ミルク療法」は文字通り粉ミルクだけを飲む、という方法であり、「飲尿療法」も自分の尿を飲む、という方法です。
こういったものは極端すぎる例かもしれませんが、食事療法というのは「極端なもの」が多かったのです。
今でもこのような食事療法を薦める人もいますが、あまりにも偏った方法ですので実践している人はわずかです。
いっぽう、現在主流とされているゲルソン療法や、それに似た「済陽式」「甲田式断食療法」などは基本的に「玄米や野菜だけ」に近いものです。
確かに、体を浄化する意味では、短期間はこのような「玄米菜食」にしてもよいと思います。
現代人の多くは体に悪いものを多く摂りすぎていたので野菜中心の生活、少食の生活にするとデトックス(排毒)効果が高く、元気になります。
しかし、徹底した玄米菜食を数か月~半年くらい続けると、多くの方が元気を無くしたり、体調を悪くしたりするのです。
中でも、私が相談を受けた人の中で多かった症状は「著しい体重の減少」です。
標準体重を大きく下回り、体全体にパワーがない・・・という状態になってしまうのです。
どういうことなのか、整理しましょう。
肉や乳製品、ラーメン、菓子類をふつうに食べて、栄養過多だった人にとって短期間の玄米菜食は、体を浄化するのに最適です。
ですから、しっかり取り組むと身体が軽くなり、体調はかなり良くなります。
しかし、元々少食の人や、玄米菜食を続けてきた人が、さらに玄米菜食を徹底すると元気がなくなり、体調が思わしくない・・・という状態になるのです。
なぜ、そんな状態になってしまうのでしょうか?
いくつかの理由がありますが、1つだけここで挙げると『たんぱく質の不足』です。
玄米と野菜だけ、しかもあまり量を食べない場合は、どうしてもたんぱく質が不足するのです。
たんぱく質が不足すると、次のような症状が表れます。
・体力が落ちる・・・筋肉が落ちるため体力が低下し、元気がでない。
・病気やケガに弱くなる・・・免疫機能が低下し、骨や軟骨が衰える。
・イライラする・・・ホルモンや神経のバランスが崩れる。
・集中できない・・・脳の機能が低下し、思考力や集中力が衰える。
肉、魚を食べない。乳製品や卵も食べないとなると、どうしてもたんぱく質が不足してしまいます。
かといって、なんでも食べればよいというわけではありません。たんぱく質も取りすぎれば弊害になりますから、”バランス”が非常に大切です。
■玄米自体が向かない人もいる
玄米とは、白米に精米する前の「米ぬか」が付いたままのお米です。
この「米ぬか」には、白米にはほとんど含まれないビタミンなどの栄養素が豊富に含まれています。
また、「抗がん作用がある」といわれているフィチンを含むことから「がん患者は玄米を食べなさい」といわれるのです。
私も米を食べるときは、玄米を食べますし玄米は非常に優れた食品だと考えています。
しかし、1つだけ問題点があります。
「玄米は消化されにくい」という点です。
玄米は食べてみると、白米よりも固いことが分かるように、強固な繊維質で包まれている状態の米です。
しっかり噛んで細かくし、胃酸で細胞壁を溶かさないことにはその栄養素を吸収できないばかりか、消化不良を起こします。
人間は年を取るほど噛む力は衰えますし、何よりも胃酸の量が格段に減っているので年配の方には、厳しい食材といえるのです。
がんは年配の方に多い病気ですし胃や大腸に問題を抱えている人がたくさんいます。
したがって、「がん患者に最も適した主食か」というと疑問が残ってしまうのです。
玄米がダメなら白米を食べるのかというと、白米は栄養素に欠けており、これでお腹いっぱいにするのは避けたいところです。
また、欧米の人は玄米を食べません。
つまり、人類共通の「がん患者さんのメインの食材」ともいえないのです。
では、がん患者さんは何を中心として毎日の食生活を送るべきなのでしょうか。
がんと闘ううえで欠かせないものがあるのですが、それを採用している人はほんのわずかです。
これについては、「がんを治す生き方」で詳しく解説しています。
※玄米を食べるときは、お粥にするなどなるべく砕いた状態にして、消化しやすいようにして食べるのが理想です。
また、きちんと消化できる人は普通に炊いた玄米を食べてもOKです。
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さて次回のテーマは、「断糖質(糖質を食べない)食事療法=ケトン食など」についてです。
---【患者さんからの報告紹介】---
直腸がんからの経過が順調な佐藤さん