今日のテーマは「抗がん剤治療は受けるべきか?」です。
私が今まで、患者さんからの相談を受けた中で、もっとも多い質問の1つが「抗がん剤」についてです。
「抗がん剤治療は受けたほうがよいのか?それとも受けないほうがよいのか?」
この疑問は、がん治療の中で最も大きなテーマかもしれません。
書店に並ぶがん関連の本でもこのテーマが一番重く扱われているような気がします。
では、この「抗がん剤治療は受けるべきか、受けないべきか」という疑問に、私はどのように回答しているのでしょうか。
抗がん剤利用の可否については様々なケースがありますので、必要かどうかは、詳しい状況を聞いてみないと判断できません。
したがってメールサポートなどで、個々に回答をさせていただくことを基本としています。
とはいえ、判断するにあたっては、大きな基準をいくつか持っています。今日はそのうちのひとつを紹介したいと思います。
それは「効果を測定できるか」という基準です。
実例として「手術後に行う抗がん剤治療」を考えていただけると分かりやすいと思います。
つまり、「目に見える腫瘍は手術で切り取りました。再発や転移を防ぐために抗がん剤を使いましょう」という場合ですね。
これは一見、筋が通っている感じがするのですが、大きな問題点があります。
それは「抗がん剤が効いたかどうか、誰にも分からない」という点です。
医師に「効果はどう測るんですか?」と聞いても、「効果は測れない」という答えが返ってくるのです。(本当にそう言われます)
もちろん統計上はこのくらい効くだろう、というのは分かっています。
しかし薬を使ったその患者に効くかどうかは、分からない。
効いたかどうかも、分からない・・・。
このような治療法なのです。
効果を測定することが誰にもできないばかりか、副作用という大きなデメリットは確実に受けます。
メリットはあるかどうかも分からない。でも、デメリットは確実。
抗がん剤が体に与えるデメリット(ダメージ)は甚大です。
がんの部位やタイプにもよりますので、あくまでケースバイケースですが基本的にはそのような治療は避ける方向で考えます。
目的がはっきりしない治療、効果を測定できない治療が、患者さんへのプラスになることは、ほとんどないからです。
私たちは「何かをやる」⇒「行動したことになる」⇒「やることはやったと納得できる」という思考をしがちですが、決してそうではないのです。
抗がん剤をする場合、しない場合。
双方にメリットとデメリットがあります。それぞれを冷静に見つめて、メリットが上回るほうを選ぶことが大切です。
日本のがん治療では、このように「とりあえず、抗がん剤やりましょう」がとても多いので、事前にしっかりと目的や効果の測定方法などを確認するようにしましょう。
確かなメリットが期待できそうで、デメリットを上回るときは治療を受けてよいと思います。(判断が難しい場合は、個別サポートを活用してください)
・・・あと、重要な点をもう1つ。
「医師は自分には抗がん剤を使わないらしい」という話を聞いたことがある人は多いと思います。
これは半分は本当で、半分は本当ではありません。
がん治療で使う薬は100種類を超えますが、薬のタイプも様々で、毒性の強い従来の「抗がん剤」もあれば、「ホルモン治療薬」「分子標的薬」「免疫チェックポイント阻害剤」など作用や特徴が大きく異なるタイプの薬も登場しています。
がんの部位によって使う薬は大きく異なりますし、効果や副作用も全く違うので、ひとくくりにして「抗がん剤はやるべき」「しないべき」と語ることは議論の焦点がズレているのです。
医師はそれぞれの薬が「どの部位のがんに、どのくらい効果を示すか。副作用は何がどんな確率で起きるか」をしっかり把握しています。
医師はガイドラインで定められている治療であっても「これは効果が高くないうえに厳しい副作用がある」というものは避けますが、逆に「副作用が強くないと予測でき、効果が高いだろう」という薬は自分でも使います。
ただそれだけのことです。いたって普通の話ですね。
治療を受ける側の私たちも同じような判断をしたいものです。薬に対する正しい知識はやはり必要だといえます。
・・・さて、次回のテーマは「私はこうしてがんを治した」という話を安易に信じてはダメ、という内容です。
書籍やネットでも「これで治す」「こうして治した」という方法や経験談はたくさんありますよね。
このような話をきちんと見極めるためにも、正しい知識が必要です。
それではまた明日。
※個別サポートの期限は半年間ですが更新可能です。
---【患者さんからの報告紹介】---
胆管がん サポート継続を希望 松田さん